恐怖の「ゆでたまご」
8月29日の日曜日夜中の2時頃から、インディアナポリスGPを見るため体力を温存しようと
夕方から酒を飲んでゴロゴロしていたら、渡米している社長から電話がかかってきました。
現地の状況とかいろいろ話をして電話を切りました。
外国から社長自ら私に電話してくるなんて久しぶりだな。
電話を切ったあと何か落ち着かない私でした。酒をぐいぐい飲みながら何が落ち着かない
のだろうか?腕組みし目をつぶって考えました。
昔何かあったような気がするが?アッそうだ・・・・思い出しました。
30年くらい前のあの忌まわしい出来事が昨日あった事のように蘇ってきました。
社長は昔から、鳥とか花が大好きで、当時もいろんな鳥を飼っていました。
いろんな鳥がいる中に、チャボと鳥骨鶏(うこっけい)がいました。
チャボは卵を抱くのがうまいらしく、孵化専用部隊として飼っていたらしいです。
そして産卵期が終わる頃に社長はクロスビーを従えイギリスのレースへ旅立ちました。
渡英する前チャボに鳥骨鶏の卵を抱かせて旅立ちましたしかしそんな事は全く知らない
私でした。
渡英してしばらく経ってから社長が電話してきました。
当時の電話は海底ケーブル方式だったので雑音がひどくうまく聞き取れません。
最初の会話は皆どうしている元気でやっているか?と言うような話でした。
私は「今度のレースに向けて全員夜遅くまで頑張っています」
と言う近況報告をした後、社長はチャボが抱いてる卵は孵化したら・・・・
(重要な部分だったが聞き取れなかった)しておいてくれ。
皆に夜遅くまでご苦労さん体に気をつけ栄養を取るように、と伝えてくれとの
電話でしたが、後はザーザー雑音でうまく聞き取れませんでした。
私は、チャボの玉子を遅くまで働いている社員に蒸かして食べさせてくれ
と解釈して、チャボ小屋に行き玉子を採ろうとすると
強烈にチャボが攻撃するので、レーシンググローブをはめて
激しい抵抗にあいながら5匹のチャボと戦い、30~40個くらい
玉子を確保しました。
そして、事務のS女子に「社長からの伝言で鳥骨鶏の玉子をゆでて休憩中に
食べさせるように」と伝えました。
3時休憩になりしばらくすると「ウォー}という歓声が聞こえてきました。
「声が出るほど喜んでくれている。チャボと戦ってよかった」と私は安堵感に包まれて
いる間もなく、血相を変えたK君はじめ数名が私のところへ詰め寄るように来て
「これは何だ」と私の目の前に玉子を置きました。
目を凝らして見ると、すべての玉子は孵化寸前のヒヨコが入っていました。
S女子はショックで、30数年たった今でも玉子は食べられないそうです。
そんな人の心配より孵化と蒸かすの勘違いは天と地以上の違いです。
悩みは深刻です。社長は外国でそろそろ雛がとれ始めている頃だな
と帰って来るのを楽しみにしているに違いない。
私はどんな言い訳をしようか?
餌をやるのを忘れて、お腹をすかしたチャボが卵を食べた?
子供だましのような言い訳しか思いつきません。いや、こんな事は子供でも
だませません。でもよくよく考えたら、言い訳も何も社員全員が事実を知っている
ではないか。英国にいる社長に恐る恐る伝えると「エーッ」と絶句していました。
帰国後、社長からは何もお咎めがなかった。
しかし、今でも時々話題になるということは、これがお咎めだったのかと
30年後にやっと気が付きました。
