社長マジック
従来のコースレコードを大幅に塗り替えたガードナーは当然のように1コーナーに一番近い位置からのスタートとなったが、あまりにも戦前の予想とかけ離れたタイムだったため、メーカーチームを始め他のチームからはエンジンの排気量が違うのではないか?とか色々なうわさが飛び交った。我々はそんなくだらないうわさに反論する事も無く、着々と決勝に向けた準備にとりかかっている。
世界初のモリワキアルミフレームがもの凄いポテンシャルを秘めている事は、一部の専門家を除き、世間ではあまり知られていなかった。社長は以前から、新型アルミフレームのポテンシャルを多くの人達に証明出来る最大のチャンスは今度の8時間耐久レースの予選と決めていた。それを実証してくれたのが、無名ライダーワインガードナーのライディングだった。大メーカーより天才クロスビーよりも早く、しかも社長自身が予測したタイムで走り、モリワキアルミモンスターのポテンシャルを世界に実証出来た事が最大の喜びだった。
では何故ガードナーはあんなタイムで走れたのか?
今だから話せる社長マジックを披露しましょう。
ガードナーは走行が始まってから順調にタイムを上げて来てはいるが、ジョンペイスとのタイム差はあまりなく、平均ラップタイムではジョンペイスの方が速いタイムで走っている。クロスビーは別恪として、二人を総合すると他の何処のチームよりも速い平均タイムで走っているので、私は大いに満足し、社長に「二人とも順調に仕上がっていますね。この状態だとジョンペイスの方が乗れているから、スタートは彼にしましょうか?」と言うと、社長は自信たっぷりに、「ガードナーはこんなタイムでは走らないよ。クロスビーより速く走れるはずだ。クロスビーが一番焦るだろうな。土曜日は面白くなるぞ。まわりの人達は皆ビックリするだろうな。」とニコニコしながら私のほうに顔を向けたが、社長の言っている意味が全く理解できず、ポカーンと口を開いている私でした。
社長が言った言葉を考えながらコースに目を向けると、背中を丸めたガードナーがストレートなのに少し右側に腰を落とすようにして通過していきました。ラップタイムを見ても何も変わらず安定したタイムだったので、社長が言っている事がますます理解できなくなってしまいました。
すっかり考え込んでしまった私を見て、社長はある秘策を教えてくれました。
社長の秘策を聞いた私はストレートを通過して行くガードナーのマシンに目を凝らしてみていると、社長が教えてくれた通り私にもハッキリと解りました。
その社長マジックとは?
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