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2011年12月15日 (木)

黄金時代の到来 パートⅣ

別室に入れられ、これから何が起きるのか分からずうつむいて待っていました。

先程一緒に来た大柄な税関職員も、私を部屋まで案内すると、そのまま出て行ってしまい、部屋には私しかいません。

そっとドアを開けたら、幸い鍵がかかっていなかったので逃げ出そうと思ったが、未だ入国手続きが済んでいない為外に飛び出す事も不可能で、絶体絶命な状況に追い込まれました。

私はてっきり「この国で禁止されている物を持ち込んで捕まってしまったのかな?正露丸?梅干?そんな物で捕まるのかな?旅行会社はそんな事言ってなかったし。それとも成田で誰かにコッソリ危険なものを入れられたのかな?でも麻薬犬が何も反応しなかったけど…」 といろいろなことを考えてしまいました。どの位時間が経過したでしょうか?

日本国の警察署長みたいな立派なバッチをつけた人が、部下らしき人を2名引き連れて部屋に入ってきました。

絶体絶命の私は心の中では居直ったつもりでしたが、態度は借りてきた猫みたいにおとなしくなっていました。

一番上司と思われる人は、部下を背後に立たせ一歩前に進み出ると、私に向かって最大級の笑顔を振り向け、グローブみたいに大きく分厚い右手を差し出し、痛いくらい私の手を握り締め、「ようこそオーストラリアへ。日本も大変美しい国ですが、自国も自然豊かなとても美しい国です。一週間という短い期間ですが、十二分にオーストラリアを堪能して下さい。」と言っているらしいのですが、先程まで悪い事ばかり想像していた為、何を言っているのか理解できなかったが、私に対して怒っていないことだけは理解出来ました。怒られていない事に安心した私は、「何故自分を呼んだのですか?」と知っている単語は全て使い切り、さらに手振り身振りを加え話すと、「貴方が幹事だとお聞きしたので代表で来て頂きました。」と言われたように解釈した私は、少し前の出来事を思い出しました。

後輩が通関でインスタントラーメンの粉末スープまで開けられていたとき、幹事は誰だと聞かれ、その時私の方に指を差していた事を思い出しました。

それにしてもこの国では毎回こんな歓迎をするのかと聞きたかったが、さっきすべての単語を使い切ってしまった私は質問することも出来ずに沈黙していると、私の心を読んだ部下は、「旅行会社のツアー団体ではなく独自で20人近くの観光客が来て頂いたのだから、特別歓迎しました。」と言ったように思いましたが、何を言っていたか本当の事は分かりません。

やっと解放された私は、野次馬的興味深さで心配?している皆のもとに戻りました。アー怖かった、しかしこんな結末は漫画の世界でしか有り得ないと心の中で思いました。

社長には通関が遅れた事情とその時の心理状態も含め事細かく説明すると、思いっきり笑われました。

それから私達は7日間、友人の案内でダートレースを見学したり、ヘリコプターに乗ったりオーストラリアを満喫し帰国するわけですが、飛行機が離陸する時、会社がプレゼントしてくれた海外旅行はこれで2回目になるが、次も行ける様に頑張ろうと思ったのは私だけではなく、段々遠ざかっていくオーストラリア大陸を機上から見ながら、全員が同じような思いをしているように見えました。

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日本に帰ってから余韻に浸っている間もなく、Z1000Jを仕上げる為”Sメカニックグループ”はエンジンチューニングを、”Kメカニックグループ”は車体周りを手がけ、出荷予定日に向け動き始めました。

だが全てそれだけに集中するわけには行きません。量産はもちろん、オートバイの甲子園”4時間耐久”に標準を合わせZEROアルミフレームも製作しなければなりませんが、皆何事もなかったように黙々と仕事をこなし、予定通りZ1000Jは南アフリカへ輸出されていきました。さあこれで一安心と一服する暇もなく、「南アフリカから第一戦だけで良いから現地に来て欲しい」とテレックスが来ました。

人選の段階でSメカニックは直ぐ決定しましたが、もう一人が決まりません。車体関係のKメカニックだろうと思っていたら、何故か私に決まってしまいました。何しろ当時南アまでの航空運賃は片道100万もするものですから、英語が出来ない私が行っても何の役に立つのだろうか?不安だらけの私に、語学力が無いから悩んでいると勘違いした社長は「50単語も覚えておけば何とかなるから」と言うので、慌てて30単語位覚え、目的が見えない出張という不安を抱きながら、5月1日、私より英語が出来る頼みの綱のS君とアフリカに旅立ちました。


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